おとなになるということ

自由と責任のバランスをとれるようになること。別れを受容すること。悲しみや寂しさと、なんとか同居しようともがくこと。くすっと笑えた出来事を話そうと思った相手が、もう居ないと気づくこと。三十歳を過ぎてもなお毎年届いていたバースデーカードが、もう届かないと気づくこと。濡れた鼻が、あたたかいふわふわが、もう指先に触れることはないと気づくこと。別れはその辺に散らばっていて、時に自分のものではないそれが傷口に触れて痛むこともある。新たな生命を育んでいない私は、今後別れを受けいれるばかりになる予定で、しかしそれに慣れる日が来るのかはまだわからない。

自分で書いたくせに鋭利な刃物のように心を抉ってくるけど、ただ無言で飲み込めるほど大人ではなかった。大切なものをなくしたその瞬間より、ずっと後になってから突然つき刺さる現実の方がつらい。せめて身の回りのみんなが少しでも平穏でいられますように。